
新NISAの成長投資枠1,200万円。
これを5年で最速で埋めるという、もはや貯金への強迫観念に近い行為を完遂しようとしている。
その孤独な戦場に現れた449A(ステート・ストリート・スパイダー S&P500 ETF)という刺客。
信託報酬0.03025%。
絶対王者eMAXIS Slimが、10兆円の威光を背負ってようやく辿り着いた0.0814%以内の壁を、さらりと越えてきた。
その差、約0.05%。
今日は、eMAXIS Slim S&P500と449A ETFの信託報酬差が、10年・20年・30年でどれほどの差になるのかをシミュレーションする。
- 1. eMAXIS Slim S&P500と449A ETFの基本スペック比較
- 2. 信託報酬0.05%差の10年・20年・30年シミュレーション結果
- 3. 449A ETFのリスク|スプレッドと繰上償還
- 4.新NISA成長投資枠で選ぶならどちらか?
1. eMAXIS Slim S&P500と449A ETFの基本スペック比較
まずは前提条件を揃えよう。
数字の独り歩きを防ぐのは、投資家の最低限の嗜みだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投資元本 | 1,200万円(新NISA成長投資枠を最速で埋めた想定) |
| 運用期間 | 30年間(一括投資して気絶) |
| 期待リターン | 年率 5.0%(私の運のなさを考慮した保守的設定) |
| 信託報酬 | eMAXIS Slim:0.0814% / 449A:0.03025% |
| 分配金 | 449Aは即時・完全再投資(超人設定) |
このシミュレーションは、449Aを完璧に使いこなした理想状態を描いている。
現実には、
-
分配金に端数が出る
-
スプレッドが発生する
-
再投資タイミングのズレがある
つまり、実際の差は少し縮まる可能性が高い。
2. 信託報酬0.05%差の10年・20年・30年シミュレーション結果
1,200万円を30年放置した時、この0.05%のコスト差は、複利の魔法によって約66万円の差となって現れる(年利5.0%想定)。
| 運用期間 | eMAXIS Slim | 449A ETF | 差額 |
|---|---|---|---|
| 10年目 | 約1,947万円 | 約1,957万円 | +10万円 |
| 20年目 | 約3,171万円 | 約3,203万円 | +32万円 |
| 30年目 | 約5,165万円 | 約5,231万円 | +66万円 |
30年後の66万円。これを手に入れるために、私は年に2回、証券口座にログインし、分配金を再投資するという無償労働を60回繰り返さなければならない。
1回あたりの労働報酬は、約1.1万円だ。
今日のログイン作業は、30年後の自分から支払われる時給1万円の仕事だとニヤける私を想像して、少し悲しくなった。その報酬が届く頃、私はその金を何に使うつもりなのだろうか。
3. 449A ETFのリスク|スプレッドと繰上償還
さらに、449Aには避けて通れない関門がある。
一つはスプレッドだ。板が薄い(純資産5.3億円なのだから当然だ)449Aを買う時、基準価額よりもわずかに高い値段で買わされることになる。この矛盾を飲み込むのに、私の合理的な脳は3〜4年の運用期間を必要とする。
そして最大のリスクが、目論見書に冷徹に記された繰上償還(早期終了)の条項だ。
449Aの目論見書によれば、受益権の口数が150万口を下回った場合、委託会社は信託を終了させることができる。現在の規模(約74万口)は、まさにその境界線上で立ち往生している状態だ。
もし20年目に強制終了を食らえば、私の非課税の夢はそこで潰え、無理やり現金化された資産を抱えて、スリムの門を叩き直すという最悪のオチが待っている。
ステート・ストリート・スパイダー S&P500® ETF 目論見書 信託の終了(繰上償還)条項より。現状の発行済口数は約74万口(2026年1月時点)であり、存続ラインの150万口獲得に向けた戦いはまだ始まったばかりである。
4.新NISA成長投資枠で選ぶならどちらか?
結局のところ、これは投資というよりは美学の領域だろう。
- スリム派:10兆円の波に乗り、全自動で資産が増えるのを最強の怠惰として楽しむ。
- 449A派:0.05%の差にこだわり、不器用なETFを乗りこなし、30年後に「勝ったぞ」と独りごちる。
まじめな話をすると、純資産が最低でも25億円を超えて、増加の勢いが止まらなくなった時に初めて、成長投資枠の残弾をぶち込むことを検討する。
それまでは、eMAXIS Slimという巨大な客船の片隅で、449Aという小舟が荒波(償還リスク)に耐えられるかを高みの見物させてもらう。それが、もっとも合理的な振る舞いというものだ。
もし今この瞬間に特攻するなら、それは投資ではなく、ステート・ストリートへの寄付か、あるいは自分たちが市場を作っているという壮大な勘違いを楽しむエンターテインメントだろう。
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