
低コストという名の餌を今日も撒く。そのたびに、私はふと思う。
世界中の海を泳ぎ回る巨大な鯨になるか、それともアメリカという一つの深淵に潜む、牙を剥いた巨獣に化けるか。
新NISAが始まって2年あまり。
世間は相変わらず、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)か、S&P500(eMAXIS Slim 米国株式)かの不毛な宗教戦争を続けている。
私は自称・合理主義者だ。
感情を排し、データとリスク、そして途中で投げ出さない確率で判断を下す。 だからこそ、今日はその合理性の裏に隠した、私の極端な本音を吐き出してみる。
- 全世界株式(オルカン)のメリットと2026年の信託報酬
- 米国株式(S&P500)の利回りとボラティリティの真実
- 数字で見るガチンコ比較|2026年2月時点の観測データ
- 10年間の戦歴|胃がざわつくリターン記録(2016-2025)
- 合理主義者の皮を被った、私の偏愛結論
全世界株式(オルカン)のメリットと2026年の信託報酬
MSCI ACWI指数に連動するこのファンドは、2026年現在も投資の最適解として王座に君臨している。
先進国23カ国、新興国24カ国、約2,500銘柄への分散投資。
米国比率は約63%だが、日本、欧州、インドといった世界の残りがポートフォリオの重石となり、安定感をもたらしているのが特徴だ。
例えるなら、世界経済という大海原に、時価総額という巨大な網を広く張る漁師だ。
一国が沈んでも、他の海域が浮上すれば全体は維持される。 新興国の爆発的成長というまだ見ぬ大魚も、網にかかれば自動的に取り込める。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は年0.0578%程度。
もはやコストはあってないようなものだ。
米国株式(S&P500)の利回りとボラティリティの真実
対するS&P500は、アメリカを代表する精鋭500社への集中投資だ。
AI・テックブームの恩恵をダイレクトに受けるMagnificent 7(マグニフィセント7)が、指数の心臓部を担っている。
例えるなら、アメリカ経済という急流に、身一つで飛び込むサーファーだ。
波を掴めば爆発的なスピードで頂点へ行けるが、逆波が来れば容赦なく叩きつけられる。 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬は年0.0814%程度。
オルカンより僅かに高いが、これに文句を言うのは、高級フレンチでパンの粉の数を確認するような野暮な行為だ。
数字で見るガチンコ比較|2026年2月時点の観測データ
| 比較項目 | 全世界株式(オルカン) | 米国株式(S&P500) | 私の目線での勝者 |
|---|---|---|---|
| 主な投資対象 | 日本を含む世界47カ国 | 米国優良企業500社 | オルカン |
| 米国比率 | 約63% | 100% | - |
| 過去10年年率リターン | 約13.3% | 約15.4% | S&P500 |
| リスク(標準偏差) | 相対的に低い | 相対的に高い | オルカン |
| 運用コスト(信託報酬) | 年0.0578%以内 | 年0.0814%以内 | オルカン |
| 新NISAでの適正 | 万能の安定感 | 攻めの資産形成 | オルカン |
(出典:MSCI、S&P Dow Jones Indices。過去の実績は将来を保証しない。そんなことは百も承知だ)
過去10年は米国株の時代だった。
だが、歴史を紐解けば米国とそれ以外は交互に覇権を握ってきた。
2025年から2026年にかけては、ドル安の影響もあり米国を除く世界株が逆襲を始めている。 オルカンがS&P500を上回る月も、今や珍しい光景ではない。
10年間の戦歴|胃がざわつくリターン記録(2016-2025)
| 年 | 全世界株式(MSCI ACWI) | 米国株式(S&P500) | 勝者 |
|---|---|---|---|
| 2025 | +22.8% | +17.8% | 全世界 |
| 2024 | +18.0% | +25.0% | 米国 |
| 2023 | +22.8% | +26.2% | 米国 |
| 2022 | -17.9% | -18.1% | 全世界 |
| 2021 | +19.0% | +28.7% | 米国 |
| 2020 | +16.8% | +18.4% | 米国 |
| 2019 | +27.3% | +31.4% | 米国 |
| 2018 | -8.9% | -4.4% | 米国 |
| 2017 | +24.6% | +21.8% | 全世界 |
| 2016 | +8.5% | +11.9% | 米国 |
(注:米ドル建て・配当込み総リターン。過去のデータは将来の成果を示唆するものではない。頭では分かっているのだ、頭では)
合理主義者の皮を被った、私の偏愛結論
ここまでオルカンの分散の素晴らしさを説いてきた。
迷ったらオルカン。
分散こそが唯一のフリーランチ。
教科書通りの正論だ。
だが、私のポートフォリオを覗けば、そこには99%の米国株式が鎮座している。
合理主義者の仮面の下で、私はほぼ全財産を一国に賭けている。
合理的でありたいと願いながら、私の指先は米国一択というレバーを叩き続けている。それは、私が自分の欲と業を信じているからだ。
オルカンを7割、S&P500を3割混ぜるなどという胃に優しい合わせ技も検討したが、結局のところ、私はアメリカという快感から逃れられなかった。
私の鯨は、インドや欧州の穏やかな海を知らない。
アメリカという、最も残酷で、最も強欲で、最も成長に貪欲な激流の中で、今日も牙を研いでいる。 これは一種の信仰であり、自虐的なまでの賭けだ。
もちろん、他人に勧めるなら迷わずオルカンと言う。
だが、私はその非合理な選択を正当化しながら続けていく。
大事なのは、どの海を選ぶかではない。
市場がナイフを降らせようが、鯨が潮を吹かなくなろうが、
- 低コストの餌(eMAXIS Slimシリーズ等)を撒き続けること
- 10年、20年、絶対にその場を去らないこと
これだけだ。
この観測日記を書き終えて、私はまたS&P500という名の濃い餌を一握り撒く。 私の鯨は、まだ小さい。