金に投資しようと思い立って調べ始めると、最初の5分で現物、ETF、投資信託、純金積立という専門用語の洪水に溺れ、確実に思考が停止する。
これは理解力の問題ではない。単に入口が多すぎるという、業界の親切心の押し売りのせいだ。
株式投資であれば「とりあえずオルカンかS&P500を買って気絶しておけ」という思考停止の最適解が存在するが、金にはそれがない。
手段ごとにコストも税金の扱いも、新NISAの対応状況も驚くほど異なる。入口を間違えると、同じ金に投資したはずなのに、なぜかコストを33倍も支払う羽目になる。これは冗談ではなく、算数の残酷な現実だ。
この記事では、金投資の5つのルートを横並びにして、どれが自分に合うかを判断できる状態にする。信託報酬という数字の奴隷である私が、一切の感情を排して正直に整理した。各詳細記事へのリンクも貼るので、ここを読み終えれば二度と迷宮で迷子にならずに済む。
- そもそもなぜ金に投資するのか?
- 金投資の5つの種類とは?コスト・NISA対応を一覧比較
- 国内金ETF(東証上場)とは?円建て完結・NISAで持てるバランス型
- 米国金ETF(IAUM・GLDM・GLD)とは?経費率0.09%が最安だが一手間ある
- ゴールド投資信託とは?手軽さ最優先・100円から始められる入口
- 現物・純金積立はどういう人向けか?コストより目的で選ぶ2手段
- 金投資の種類の選び方とは?タイプ別おすすめ
- 金投資に関するよくありそうな質問
- まとめ|金投資の種類と選び方
そもそもなぜ金に投資するのか?
金は何も生まない・・・。配当も出さなければ、利子もつかない・・・。ただそこに鎮座し、保管すれば場所をとり、泥棒の標的になるだけだ・・・。
それでも資産として世界中で扱われる理由は唯一、株や債券が血を流して倒れているときに、なぜか一人だけ涼しい顔をして立っている傾向があるからである。
厳密には常に逆相関ではないが、歴史的に金は株式との相関が低く、ポートフォリオ全体の値動きをマイルドにする効果が期待できる。インフレ局面でも実物資産として現金の目減りを防いでくれる。過去、リーマンショックで資産を溶かした経験を持つ身としては、この分散効果の意味が骨身に染みている。
金投資の5つの種類とは?コスト・NISA対応を一覧比較
まずは全体像を把握する。コストと手間とNISA対応を一覧表にまとめた。
| 種類 | 少額から | NISA対応 | 手間 | コスト目安 | 現物保有 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現物(金地金・コイン) | × | × | 大 | スプレッド数%+保管費 | ◎ |
| 国内金ETF(東証) | ○ | ○(成長投資枠) | 小 | 信託報酬0.1775〜0.44% | × |
| 米国金ETF | ○ | ○(成長投資枠) | 小〜中 | 経費率0.09〜0.40% | × |
| ゴールド投資信託 | ◎(100円〜) | ○(成長投資枠) | 最小 | 信託報酬0.1838〜0.99% | × |
| 純金積立 | ◎ | × | 小 | 手数料1.5〜3%程度 | △(引き出し可) |
この表を見た瞬間に現物と純金積立はコストが重すぎると感じた人の直感は正しい。以下でそれぞれ掘り下げる。
国内金ETF(東証上場)とは?円建て完結・NISAで持てるバランス型
東京証券取引所に上場するETFを、通常の株式と同じように証券口座からリアルタイムで売買する方法だ。314A、425A、447A、1540などが主要なプレイヤーであり、いずれも金価格への連動を目指している。
市場が開いている時間ならいつでも売買でき、信託報酬は最安で0.1775%(425A)と十分に良心的だ。円建てで完結するため、面倒な為替手数料を気にする必要がない点もストレスフリーである。当然、4銘柄すべてが新NISAの成長投資枠に対応している。
4本の詳細な比較(信託報酬・純資産・流動性・NISAでの使い勝手)は国内ゴールドETF比較記事でやっている。
米国金ETF(IAUM・GLDM・GLD)とは?経費率0.09%が最安だが一手間ある
米国市場に上場する金ETFを、主要ネット証券などから外国株として購入するルートだ。特筆すべきはIAUMの経費率0.09%という圧倒的な破壊力である。
国内ETFが霞むほどの低コストであり、かつドル建てで金を保有できるため、金とドルの二重ヘッジが完成する。
難点は、為替手数料と運用の手間だ。円をドルに換えるコストと手間が発生する。コストを極限まで削るためなら、その種の手間を受け入れられるかどうかが選択の分かれ道だ。
IAUM・GLDM・GLDの経費率・純資産・NISAでの購入可否は米国ゴールドETF比較記事にまとめた。
ゴールド投資信託とは?手軽さ最優先・100円から始められる入口
100円から積立できる、金投資の入口として最もハードルが低い手段だ。一度積立設定をしておけばあとは放置で毎月金が積み上がる。ETFのように銘柄コードを調べて指値を入れる必要がなく、投資に割く脳のリソースをほぼゼロにできる。
現在の最有力候補は、「サクっと純金(SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド)」だ。信託報酬0.1838%・純資産約3,246億円を誇り、実質的に中身は米国の低コストETF(IAUM)に投資する仕組みになっている。
コストと手軽さのバランスとしては芸術的な出来栄えだ。ただし、楽天証券では買えないという致命的な問題が存在し、多くの楽天経済圏住人の心を静かに折り続けている。
信託報酬・純資産・取り扱い証券会社の詳細はゴールド投資信託ランキング記事でまとめている。
現物・純金積立はどういう人向けか?コストより目的で選ぶ2手段
コストの観点から見れば、これら2つの手段は完全に「お話にならない」レベルで不利だ。しかし、私はその存在を全否定するつもりはない。人間には合理性だけでは割り切れない感情があるからだ。
現物(金地金・コイン)は、田中貴金属や三菱マテリアルで金の塊そのものを買い、手元に置く方法だ。購入時の売買スプレッドが数%に及ぶうえ保管コストもかかり、NISAも使えない。それでも有事に物理的に持てるという安心感と、金塊を手元に置くという体験はほかの手段では得られない。
純金積立は、毎月定額で金を買い付け、将来的に現物として引き出す権利を得るシステムだ。購入手数料が1.5〜3%と高く、NISA非対応というディスアドバンスはあるが、「いつか本物の金の延べ棒を手に入れる」という明確な出口があるなら、それは投資ではなく良質なエンターテインメントとして成立する。
金投資の種類の選び方とは?タイプ別おすすめ
| こんな人に | おすすめ手段 | 詳細記事 |
|---|---|---|
| 手間最小・100円から始めたい | ゴールド投資信託(サクっと純金) | 投資信託比較へ |
| NISAで円建てETFとして持ちたい | 国内金ETF(425A・1540など) | 国内ETF比較へ |
| 経費率を限界まで下げたい・ドル資産も積みたい | 米国金ETF(IAUM・GLDM) | 米国ETF比較へ |
| いつか現物に転換したい | 純金積立 or 1540(現物転換可) | 国内ETF比較へ |
| 金塊を手元に置きたいロマン派 | 現物(コストと保管リスクを理解した上で) | — |
金投資に関するよくありそうな質問
金投資はNISAで非課税にできますか?
国内ETF、米国ETF、投資信託なら新NISAの成長投資枠が使える。つみたて投資枠は対象外だ。現物と純金積立にいたっては、NISA自体が使えない。NISAで金を持ちたいなら、ETFか投資信託の二択だ。
金投資の理想的なポートフォリオ比率とは?
一般的には5〜15%程度が目安とされている。金は利益を生まない資産のため、比率を上げすぎると株式の値上がり益を取りこぼす。あくまでヘッジ枠(スパイス)として使う設計が合理的で、全力で金に突っ込む前に株式の比率を確認することを勧める。
ETFと投資信託の違いとは何ですか?
最大の差はリアルタイムで売買できるかどうかだ。ETFは市場が開いている間いつでも売買できるが、投資信託は1日1回の基準価額での約定になる。長期積立なら実質的な差はほぼない。価格を見ながら機動的に動きたい場合はETF、設定して気絶したいなら投資信託が向いている。
純金積立と投資信託はどちらがいいですか?
コストで比較するなら、投資信託の圧勝だ。純金積立は購入のたびに1.5〜3%の手数料がかかる一方、サクっと純金の信託報酬は0.1838%。唯一、純金積立が勝る点は現物への転換ができることで、それに価値を感じるかどうかで選択が変わる。
まとめ|金投資の種類と選び方
・コストは0.09%(米国ETF・IAUM)〜3%(純金積立)まで最大33倍の差がある
・NISAで金を持つなら国内ETF・米国ETF・投資信託の3択。現物と純金積立はNISA非対応
・手間最小で始めるならゴールド投資信託(サクっと純金・信託報酬0.1838%)が最有力
・NISAで円建てETFとして持つなら国内ETF(425A・0.1775%が最安)
・経費率を最小化したいなら米国ETF(IAUM・0.09%)。ただしドル転の手間が必要
・現物と純金積立はコスト高・NISA非対応。現物転換という目的がある場合のみ検討
・金はポートフォリオの5〜15%程度のヘッジ枠として持つのが基本設計
各手段の詳細比較はこちら。