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NTT(9432)2025年度決算解説|増収増益なのに株価が上がらない理由と、配当16期連続増配の現実【2026年5月】

NTT株式会社のロゴ|2025年度決算・配当利回り・株価分析【2026年5月】

NTT(9432)2025年度決算の結果は?過去最高も素直に喜べない理由

2025年度(2025年4月〜2026年3月)の連結決算は、表面上の数字だけを見れば全項目で前年を上回る非の打ち所がない着地だ。

まずはその見事な実績を振り返る。

指標 2025年度実績 前年比
営業収益 14兆4,091億円 +5.1%
EBITDA 3兆4,233億円 +5.7%
営業利益 1兆7,062億円 +3.4%
当期利益 1兆370億円 +3.7%

営業収益が過去最高を更新した主な要因は、グローバル・ソリューション事業(NTTデータグループ)における大型案件の獲得だ。

さらに2025年10月に住信SBIネット銀行を連結子会社化したことも大きく寄与した。

この銀行取り込みの副産物として、貸借対照表の規模が急膨張し、総資産は前年度末比で16兆円以上も増加。

実に46兆7,213億円という、もはや国家予算レベルの巨体へと進化を遂げた。

2025年度決算サマリー:見かけは完璧な増収増益
営業収益・EBITDA・営業利益・当期利益の主要4指標すべてで前年をクリア。過去最高の売上を叩き出した。数字の上では、文句なしに「よくできました」と拍手を送るべき内容だ。

2026年度業績予想はどうなる?増収減益の不都合な真実

投資家として本当に直視しなければならないのは、過去の栄光ではなくこれからの見通しだ。

2026年度の業績予想には、少し不穏な空気が漂っている。

指標 2025年度実績 2026年度予想 前年比
営業収益 14兆4,091億円 15兆600億円 +4.5%
EBITDA 3兆4,233億円 3兆4,300億円 +0.2%
営業利益 1兆7,062億円 1兆7,100億円 +0.2%
当期利益 1兆370億円 9,800億円 ▲5.5%

売上は増えるのに、手元に残る利益は減るという、株主にとっては少々胃の痛くなる構造だ。

営業収益が4.5%伸びる一方で、当期利益は5.5%の減益を掘る。

このねじれ現象の犯人は明確だ。

NTTデータグループを完全子会社化するために調達した総額2兆3,800億円にのぼる多額の借入が、金融費用として重くのしかかっている。

有利子負債は前年度の10兆101億円から15兆7,116億円へと急増しており、金利負担が利益をゴリゴリと削る構図が完成してしまった。

来期予想は減益:借入コストが牙をむく
2026年度の当期利益予想は9,800億円(前年比▲5.5%)。営業利益はほぼ横ばい(+0.2%)を維持するものの、NTTデータ完全子会社化に伴う利払い費の増加が直撃する。稼いでも稼いでも利息に消える、そんな切ない現実が待っている。

セグメント別の明暗はどうなっているのか?変わりゆくNTTの輪郭

巨大企業NTTの内訳を覗くと、事業ごとの明暗がはっきりと分かれている。

牽引役となったのはグローバル・ソリューション事業(NTTデータグループ)だ。

営業収益+7.9%、営業利益+50.7%という猛烈な勢いを見せた。

海外の大型案件が順調に進捗したほか、データセンター事業の拡大が大きく貢献している。

シンガポール証券取引所に上場させたデータセンターREIT(NTT DC REIT)を活用し、資産を軽くするアセットライト戦略も綺麗にハマった格好だ。

その一方で、かつての大黒柱であった総合ICT事業(ドコモを含む)は冴えない。

営業収益こそ3.9%増えたものの、営業利益は前年比7.7%減の9,421億円へと沈んだ。

格安プランをはじめとするコンシューマ通信市場の激しい競争環境に晒され、顧客獲得や維持のための費用増加が利益を圧迫している。

住信SBIネット銀行の連結化で貸出金が1兆円超と急膨張したものの、その分コストも相応にかさんでいるのが現状だ。

地域通信事業(NTT東日本・西日本)は、固定電話というレガシー収入の絶え間ない減少を光回線の堅調な拡大でカバーし、営業利益+4%となんとか踏みとどまった。

なお、その他事業(不動産・エネルギー等)にいたっては、エネルギー事業のコスト高騰が響いて営業損益が16億円の赤字へと転落している。

セグメント別の通信簿を眺めていると、「私が買ったのは通信会社ではなく、データセンターと銀行の詰め合わせセットだったのでは?」という奇妙な錯覚に囚われる。時代に合わせた変化といえば聞こえはいいが、ドコモが湯水のように稼いで全体を支えていたあの古き良き安定感は、過去の遺物になりつつあるようだ。

中期財務目標の見直しとは?「3年後倒し」が意味する厳しさ

今回の決算発表において、既存の株主にとって地味に、しかし最も重い一撃となったのがこのトピックだ。

NTTはこれまで2027年度にEBITDA4兆円を達成するという中期財務目標を掲げていた。

しかし、今回それをあっさりと断念し、達成時期を2030年度へと「3年後倒し」にすることを発表した。

私たちが頼りにしていた既存の通信事業(コネクティビティ分野)の市場環境変化が、経営陣の想定を上回るスピードで悪化しており、従来のペースでは到底届かないと白旗を揚げたわけだ。

今後は、AIを軸としたバリュー分野(法人ICT、海外データセンター、金融)の拡大と、独自の光ネットワーク技術であるIOWNをAIインフラへ転換する「AIOWN(アイオウン)」戦略に命運を託すという。

EBITDA(イービットディーエー)とは?
税引前利益に支払利息や減価償却費を足し戻した利益指標。NTTのような巨額のインフラ設備投資を行う企業では、毎年の減価償却費が膨大になるため、純利益よりも「実際の事業がいくら稼ぎ出しているか」を測るために重宝される。この4兆円到達が3年延びた事実は、主力である通信事業の逆風が想像以上に強いことの裏返しに他ならない。

NTT(9432)の配当利回りと株主還元はどうなる?最後の砦

業績予想はやや視界不良だが、株主還元という名の飴玉だけはしっかりと用意されていた。

2025年度の期末配当は1株2.65円。

そして注目すべき2026年度の年間配当予想は、前年から0.1円増配の1株5.4円が提示された。

これが無事に着地すれば、驚異の16期連続増配となる。

さらに、総額2,000億円(上限)・14億株(上限)の自己株式取得を2026年5月11日から2027年3月31日にかけて実施することも決定した。

当期利益が減益予想であるにもかかわらず増配に踏み切れるのは、この大規模な自己株買いによって1株あたり利益(EPS)を無理やり底上げする計算が立っているからだ。

実に見事な大人の算数である。

項目 株主還元の内容
2025年度期末配当 1株2.65円
2026年度年間配当予想 1株5.4円(前年比+0.1円)
連続増配記録 16期連続増配を見込む
自己株式取得枠 最大2,000億円 / 14億株
取得実施期間 2026年5月11日〜2027年3月31日
配当利回り(株価151.8円換算) 約3.56%

NTT株の今後の見通しとは?配当目的でホールドし続ける現実

さて、ここからは冷酷な現実と向き合う時間だ。

私は現在、NTT株を取得単価156円で600株保有している。

5月15日の終値151.8円をベースに計算すると、現在の評価損益はマイナス2,520円。

投資元本93,600円に対して、綺麗に約2.7%の含み損を抱えている状態だ。

もっとも、2026年度の年間配当予想(5.4円 × 600株 = 3,240円 / 税引前)を考慮すれば、1年間でもらえる配当金が現在の含み損(2,520円)をあっさりと相殺してくれる計算にはなる。

つまり、購入した時点の判断が致命的なエラーだったわけではない。

これくらいの含み損で右往左往しているようでは、配当株投資家としての修行が足りないのだと、自分に対して静かに言い聞かせている。

そもそも156円という中途半端な株価でエントリーした根拠を今一度問い直せば、16期連続増配という美しい響きに目が眩んだから以外の何物でもない。詰まるところ、私はただインカムゲインが欲しかったのだ。私の買い付けた156円というナビゲーションシステムが、現在151.8円という見当違いの場所に私を案内している事実は、私の市場を見通す目の粗さを示している。合理的で少しシニカルな投資家を気取ってはいるものの、結局は連続増配という甘い蜜にホイホイと引き寄せられる、典型的な個人投資家の一人に過ぎないのだ。今後の見通しとしては、来期の当期利益5.5%減益というブレーキに加え、多額の有利子負債による金利負担が数年間は重石として機能し続けるだろう。中期財務目標の3年後倒しも、株価を短期的に押し上げるカタリスト(触媒)が消滅したことを意味しており、上値は当面重いと言わざるを得ない。

結論として、今すぐこの株を投げ捨てるほどの悪材料ではないが、かと言って意気揚々とナンピン買い(追加購入)をするほどの強気にもなれない。

16期連続増配と2,000億円の自己株買いという株主還元の盾を信じ、EBITDA4兆円がようやく達成されるという2030年度まで、あと4年ほどじっと息を潜めて待ち続けるのが現実的な選択肢だ。

毎年3,240円の配当金をチャリンと受け取りながら、スマホの画面越しに株価の回復を祈る日々は、お世辞にもエキサイティングな投資ライフとは言えないが、これこそが合理的な放置なのだと自分を納得させるしかないだろう。

NTT(9432)2025年度決算まとめ
・2025年度売上高は14兆4,091億円と過去最高を更新
・主要4指標すべてで前年比プラスを達成し、増収増益で着地
・2026年度の純利益は▲5.5%の減益予想(NTTデータ完全子会社化に伴う金利負担増が要因)
・2026年度の年間配当は5.4円を予定し、16期連続増配へのカウントダウンへ
・最大2,000億円の自己株式取得を2026年5月から約1年かけて実施
・中期財務目標(EBITDA4兆円)の達成時期は2027年度から2030年度へ3年延期
・現在の株価(151.8円)ベースでの予想配当利回りは約3.56%
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