
NVIDIAの決算発表を受け、含み益という名の数字の幻が目減りしていくのを眺めながら、この原稿を書いている。
2026年2月25日、NVIDIA(エヌビディア)が発表した2026年度第4四半期決算は、控えめに言っても化け物だった。過去最高益を軽々と更新し、アナリストたちの予想を置き去りにするその姿は、まさにAI帝国の絶対王者だ。
しかし、翌日のマーケットが下した審判はマイナス5.5%の急落という非情なものだった。一夜にして約40兆円の時価総額が消し飛んだ計算だ。私の資産も、ちょっとした高級車が買えるレベルで溶けていったが、これもまた投資の醍醐味、あるいは自虐のネタだろう。
なぜ完璧な決算で売られるのか。この不条理な相場の裏側を私なりに解説する。
1. 異次元すぎる決算内容を冷静に振り返る
まずは、今回発表された数字を整理しておこう。ここを理解しないと、なぜ市場がもっと、もっとと強欲になっているのかが分からない。
Q4(第4四半期)の主な実績
- 売上高:681億ドル(約10.6兆円 / 前年同期比 +73%)
- データセンター部門:623億ドル(前年同期比 +75%)
- 粗利益率:75.2%(もはや製造業の数字ではない)
- 非GAAP EPS:1.62ドル(市場予想を大きく上振れ)
次期(2027年度Q1)ガイダンス
- 売上高予想:780億ドル(市場予想の730億ドルを大幅に超過)
特筆すべきは、この強気な見通しが中国向け売上ゼロを前提に叩き出されている点だ。ジェンセン・フアンCEOは「Agentic AI(自律型AI)の爆発的採用が始まった」と語り、次世代アーキテクチャであるVera Rubinによる10倍の効率化をぶち上げた。
数字だけを見れば、AIブームの終焉どころか、まだ序章に過ぎないと感じさせる内容だ。
2. なぜ売られた?期待値という名の怪物
これほどの好決算で株価が下がる理由は、ファンダメンタルズの欠陥ではなく、投資家の歪んだ期待にある。主な理由は以下の5つだ。
理由①:典型的なSell the News(材料出尽くし)
ウォール街の住人たちは、NVIDIAが好決算を出すことを当然だと思っていた。モルガン・スタンレーが半導体史上、最も美しくクリーンな上振れと絶賛しても、市場は知ってたの一言で片付けたのだ。
期待が120点だったところに110点の回答が来たから売られた、という贅沢な悩みである。
理由②:AI投資の持続可能性への疑心暗鬼
MicrosoftやMetaといった巨大顧客(ハイパースケーラー)が、天文学的な金額をNVIDIAに貢ぎ続けている。
しかし、投資家は「この巨額投資、いつ回収できるの?」と不安なのだ。今回、TSMCへの支払い義務が前四半期の16億ドルから95億ドルへ急増した。これは先行投資の凄まじさを物語るが、裏を返せば失敗した時のリスクも膨れ上がっていることを意味する。
理由③:王座を狙う刺客の影
MetaがAMDのチップを一部採用し始めたというニュースは、NVIDIA一強時代の終焉を予感させた。独占禁止法の監視の目もあり、顧客が脱NVIDIAを模索するのは合理的だ。このわずかな綻びを、市場は敏感に察知した。
理由④:バリュエーション(割高感)の壁
時価総額4.5兆ドル、PER(株価収益率)は40倍台後半。どれだけ稼いでも、株価がそれ以上に先行してしまえば、機関投資家は一旦利益を確定して、温泉にでも行こうかという気分になる。
理由⑤:新たな物語の不足
Blackwellの量産は順調だが、投資家はさらにその先、例えばOpenAIとの1000億ドル規模の具体的な進捗といった、脳を焼くような新しい刺激を求めていた。
3. それでもNVIDIAを投げ売りしない理由
短期的にはボコボコに叩かれているが、中長期のファンダメンタルズが壊れたわけではない。中級者以上の投資家なら、以下のポイントに注目すべきだろう。
- 需要の多様化:大手クラウド企業だけでなく、一般企業や政府によるソブリンAIの需要が伸びている。
- ネットワーキングの強み:チップ単体ではなく、システム全体(NVLinkなど)で囲い込む戦略が功を奏している。
- 圧倒的なキャッシュフロー:フリーキャッシュフローは970億ドルを超えている。これだけの資金があれば、自社株買いや次世代開発でいくらでも戦える。
4. 私の保有状況と今後の戦略
ここで、私のポートフォリオを晒しておこう。含み損という現実を直視するのは辛いものだが。
| 口座種別 | 保有株数 | 取得単価 | 現状の評価 |
|---|---|---|---|
| 普通口座 | 17株 | 183.92ドル | 含み損突入 |
| 普通口座(追加) | 2株 | 186.12ドル | 完全に高値掴み |
| NISA枠 | 9株 | 84.90ドル | 圧倒的な守護神 |
合計:28株(平均取得単価 約152ドル前後)
決算後の急落で、せっかく積み上げた含み益が削られる音を聞くのは、精神衛生上よろしくない。しかし、私は1株も売っていない。なぜなら、NVIDIAという銘柄は20%の下落を乗り越えて新高値を目指すという動きを、過去に何度も繰り返してきたからだ。
この程度のボラティリティで狼狽売りするのは、ジェットコースターの安全バーを走行中に外そうとするようなものだ。
今後の立ち回り
- 静観:NISA枠は宝物のように抱え続ける。
- 買い増しの検討:180ドルを割り込み、170ドル台が定着するようなら、少しずつ拾っていく。
- 分散の徹底:NVIDIAへの愛が強すぎてポートフォリオの30%を超えそうになったら、心を鬼にして他のセクターへ目を向ける。これが一番難しいのだが。
まとめ:2026年は揺さぶりの年
NVIDIAの基礎体力は、依然としてオリンピック選手並みに強靭だ。
ただ、あまりにも注目されすぎているがゆえに、株価は期待と現実のギャップという名の気まぐれな風に左右される。
2026年は、AIが魔法の杖から実益を生むツールへと評価が変わる過渡期だ。
好決算でも売られる場面は、これからも何度か訪れるだろう。
あなたがもし、今回の急落で眠れない夜を過ごしているのなら、一旦チャートを閉じることをお勧めする。
2026年2月28日執筆 含み益が減っても食欲は減らない個人投資家