2026年5月11日、オリックス(8591)が2026年3月期の通期決算を発表した。
営営業収益3.3兆円。純利益4,472億円。ROE10.4%。
数字だけ見れば文句のつけようがない。
問題は、この会社が何をしている会社なのか、決算書を読み込んだ後でも依然としてよくわからないという点だ。
「なんでもやってる」という答え以上の説明が難しい。
リース、不動産、保険、銀行、航空機、再生可能エネルギー、欧州の資産運用、アジアの金融……。
金融と事業投資を組み合わせたコングロマリットと呼ぶのが一番近いが、守備範囲が広すぎて、セグメントの数が10個ある。
私は、夫に「オリックスって何してる会社?」と聞かれ、「まあ色々」と答えた。
取得単価1,519円から100株ずっと握っている銘柄への説明として最低だが、それ以上でも以下でもない。
それでも株価は3倍超になるし配当は積み上がる。細かいことを気にしても仕方がないという、合理的ともいえる諦念が私の投資スタイルだ。
- オリックス(8591)2026年3月期決算の概要とは?
- 主要な決算数字を一気に確認する
- セグメント別の利益はどうなっている?10部門を読み解く
- 環境エネルギーが大復活した理由とは?
- ORIX USAの苦戦はなぜ起きたのか?
- オリックス銀行売却で来期に何が起きる?
- オリックスの配当はいくら?来期予想と利回りを確認する方法
- オリックスへの投資判断はどう考えるべきか
オリックス(8591)2026年3月期決算の概要とは?
まず全体感を押さえよう。
前期(2025年3月期)と比べて何が変わったかを一行でまとめると、「見た目は全面増益、よく見ると明暗がくっきり分かれていた決算」だ。 表面上の数字は美しい。
営業収益は前期比16%増の3兆3,308億円。税引前利益は44%増の6,914億円。純利益は27%増の4,472億円。ROEは8.8%から10.4%へ上昇し、初めて10%台を突破。総資産は18兆円を超えた。
では何がこの数字を作ったのか。主役はふたつ。
「インドの再生可能エネルギー会社Greenko Energy Holdingsの株式譲渡益」と「米国子会社のファンド評価益」だ。
どちらも一過性の要素を含むため、中身をきちんと確認する必要がある。
主要な決算数字を一気に確認する
まず基本指標をテーブルで整理する。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 2兆8,748億円 | 3兆3,308億円 | +15.9% |
| 営業利益 | 3,318億円 | 4,562億円 | +37.5% |
| 税引前純利益 | 4,804億円 | 6,914億円 | +43.9% |
| 当社株主帰属純利益 | 3,516億円 | 4,472億円 | +27.2% |
| EPS(基本的) | 307.74円 | 400.27円 | +30.1% |
| ROE | 8.8% | 10.4% | +1.6pt |
| 1株当たり純資産(BPS) | 3,599.24円 | 4,080.24円 | +13.4% |
| 年間配当 | 120.01円 | 156.10円 | +30.1% |
| 配当性向 | 39.0% | 39.0% | 維持 |
EPS(1株当たり純利益)は「株1枚あたり会社がいくら稼いだか」。ROEは「株主から預かったお金でどれだけ効率よく稼いだか」の比率だ。オリックスのROEが10.4%というのは、バフェットが目安にすると言われる10%をようやく超えたという意味で注目に値する。ただし、バフェット本人はオリックス株をかつて保有して売却しているので、あまり大きな声では言えない。
セグメント別の利益はどうなっている?10部門を読み解く
オリックスは10のセグメントに分かれている。
多すぎる。
ゲームのパーティメンバーが10人いたら1人ぐらい死んでても分からない。
主要な数字をテーブルで整理すると以下になる。
| セグメント | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 増減率 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 法人営業・メンテナンスリース | 903億円 | 1,007億円 | +12% | ○ |
| 不動産 | 705億円 | 785億円 | +11% | ○ |
| 事業投資・コンセッション | 989億円 | 1,256億円 | +27% | ◎ |
| 環境エネルギー | ▲49億円 | 1,158億円 | 黒字転換 | ◎ |
| 保険 | 744億円 | 1,029億円 | +38% | ◎ |
| 銀行・クレジット | 293億円 | 272億円 | ▲7% | △ |
| 輸送機器 | 674億円 | 666億円 | ▲1% | △ |
| ORIX USA | 399億円 | 10億円 | ▲98% | × |
| ORIX Europe | 444億円 | 631億円 | +42% | ◎ |
| アジア・豪州 | 345億円 | 512億円 | +49% | ◎ |
光と影がはっきりしている。
光の側は環境エネルギーの劇的復活、保険、ORIX Europe、アジア。
影の側はORIX USAだ。
多角化のうまいところは、10部門あればどこかがコケても他が支えると言えてしまう点だ。
これは強みでもあるし、問題の所在を見えにくくする構造でもある。
環境エネルギーが大復活した理由とは?
最大のサプライズはここだ。
環境エネルギーセグメントは前期に49億円の赤字を計上していた。
それが今期は1,158億円の黒字へ転換。
差額にして約1,207億円の改善だ。
正解は「インドの再生可能エネルギー会社Greenko Energy Holdingsの株式譲渡」だ。
この売却で約831億円の売却益を計上し、持分法投資損益も約833億円と爆発的に膨らんだ。
Greenko Energy Holdingsはオリックスが持分法適用会社として保有していたインドの大手再生可能エネルギー企業。株式の譲渡によって含み益を一括確定させた。単純な売却益だけでなく、評価・持分法の影響も大きく、合わせて環境エネルギーセグメント全体を押し上げた。一度きりの利益であり、来期以降に同規模の押し上げ効果は期待できない。このセグメントの利益が来期に激減しても驚かないことが重要だ。
前期の赤字の原因も今期の黒字の主役も、同じGreenko絡みというのはいかにも皮肉が利いている。
ジェットコースターのようなセグメントだということは念頭に置いておく必要がある。
ORIX USAの苦戦はなぜ起きたのか?
逆方向のサプライズがORIX USAだ。
前期399億円のセグメント利益が、今期はわずか10億円。
98%減という数字は重い。
ただし有価証券売却・評価損益が約894億円と大きくプラスに働いており、完全に崩壊したわけではない。
本業の構造的な不安が露呈した決算、というのが正確な評価だ。 要因を整理するとこうなる。
①のれん・無形資産の減損を527億円計上。第2四半期に新規取得した子会社で早くも大規模な減損が発生した。
②販売費および一般管理費が前期比約285億円増加。急拡大の代償が一気に顕在化した形だ。
③持分法投資損益がマイナス113億円と足を引っ張った。
④一方で有価証券売却・評価損益が約894億円と大きく改善。投資損益がなければさらに厳しい数字になっていた。
のれんの減損は「買いすぎた」あるいは「高く買いすぎた」ことを事後的に認める行為だ。527億円の減損は軽くない。来期以降、ORIX USAが持ち直せるかどうかは注目すべきポイントの一つだ。
オリックス銀行売却で来期に何が起きる?
決算短信の後発事象に、さりげなく重要な記述が載っている。
2026年4月27日、オリックス銀行の全持分を大和ネクスト銀行へ譲渡することを決定した。
2026年10月までに完了予定で、譲渡関連損益として約1,242億円(税金影響考慮前)を2027年3月期に計上する見込みだ。
来期(2027年3月期)の業績予想は純利益5,300億円(前期比+18.5%)だが、この銀行売却益(税前ベースで約1,242億円)はまだ反映されていない。税引後では800億円前後になると見られ、売却が完了すれば業績のさらなる上振れ要因となる可能性がある。一方でオリックス銀行のセグメント利益(今期272億円)は来期から剥落する。プラスとマイナス、両方の視点から見る必要がある。
決算期末(この場合2026年3月31日)の後に起きた重要な出来事のこと。決算書には載るが、数字には反映されない情報だ。投資家はここを読み飛ばしがちなので要注意。
オリックスの配当はいくら?来期予想と利回りを確認する方法
配当に話を移す。
ここは保有者にとって最も体温の上がる項目だ。
| 項目 | 2025年3月期(実績) | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(予想) |
|---|---|---|---|
| 年間配当 | 120.01円 | 156.10円 | 187.36円 |
| 配当性向 | 39.0% | 39.0% | 39.0%(または156.10円の高い方) |
| 現在株価ベース利回り(5,514円) | – | 2.83% | 3.40%(予想) |
私の保有状況を晒すと、取得単価1,519円・100株だ。
100株 × 156.10円(今期実績)= 年間15,610円(税引前)。
来期予想187.36円なら、100株 × 187.36円 = 18,736円(税引前)になる計算だ。
取得単価ベースの配当利回りは156.10円で10.3%。
来期予想ベースでは12.3%だ。
数字を打ち込んだとき、自分でも一瞬固まった。
1,519円で買った株が、1年間に1,870円以上の配当を生もうとしている。
元本151,900円に対して年間18,700円超。
利回りにして12%を超える。これを複利の恩恵と呼ばずして何と呼ぶのか。
含み益の計算もしておこう。
現在株価:6,009円(2026年5月13日終値)
取得単価:1,519円
保有:100株
含み益:(6,009 − 1,519)× 100 = 449,000円(+295%)
取得単価から3.9倍になっている。
インデックス投資家を自称している私が個別株で3倍を超えているという事実は、どこか腑に落ちない気持ちもあるが、お金に感情はないので黙って受け取ることにする。
オリックスへの投資判断はどう考えるべきか
強気材料と注意すべき点を整理しておく。
・ROEが初めて10%を超え、資本効率の改善が数字で証明された
・来期純利益は5,300億円予想(+18.5%)で成長が続く見通し
・銀行売却益約1,242億円(税前ベース)が来期の追い風になりうる
・配当性向39%を維持しながら配当額は前期比30%増
・ORIX Europeとアジア・豪州が堅調に成長を続けている
・環境エネルギーの今期利益はGreenko売却という一過性要因が主体で、来期は大幅減益の可能性がある
・ORIX USAが本格回復できるかどうかはまだ不透明
・2027年3月期よりセグメント区分を変更予定。過去数字との比較が難しくなる
・銀行売却後、預金2.6兆円という安定的な資金調達手段を失う点は中長期的な論点だ
・現在株価5,514円に対してPBRは約1.35倍。割安というほどでもない水準
割安かどうかという問いに対する答えを一言で言えば、「悪くはないが飛び込むには勇気がいる水準」だ。
BPS(1株当たり純資産)は4,080円なので、現在株価5,514円はその1.35倍だ。
かつて2,000円台で買えた株が5,500円になった今、新規で買うのは別の話になる。
・純利益4,472億円(前期比+27%)・ROE10.4%と過去最高水準の決算
・環境エネルギーはGreenko売却益で大幅黒字転換(一過性)、ORIX USAは構造的な不安が露呈
・来期(2027年3月期)は純利益5,300億円(+18.5%)を予想。銀行売却益約1,242億円(税前)が上振れ要因
・年間配当は156.10円(今期)→187.36円(来期予想)と増配継続
・取得単価1,519円保有者は含み益+263%、配当利回り(取得単価ベース)は来期予想で約12%
・新規投資家はPBR1.35倍・配当利回り3.4%の水準を冷静に判断する必要がある
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではないぞ。投資判断はご自身の責任で頼む。
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