期待値で鯨になる

米国株・ETF・投資信託で資産を育てる合理主義投資ブログ。低コストという名の餌で巨大な鯨へ育てる観測日記。

NVDAを半分売り、MUで意味不明な取引をした夜|SOX-10%の現場報告【2026年6月】

6月5日、金曜日の夜。

スマホの画面を開いた私の眼球に、NVIDIAの-6%という無慈悲な数字が突き刺さった。フィラデルフィア半導体指数(SOX)に至っては-10.26%だ。1日でこれだけの変動幅を見せるのは歴史的にも異常事態であり、時価総額にして約208兆円という国家予算レベルの金が、私の瞬きとほぼ同じスピードで宇宙の塵と消えたことになる。

そして私はその夜、どうしたか。……NVIDIAをぶん投げた。

売った理由を聞かれると非常に困る。完全なパニック状態だったかと言われると、そうではないと思いたい。だが、冷静沈着だったかと言われれば、間違いなく脳の機能は停止していた。画面を何度も見直し、気付けば指が勝手に売りボタンをタップしている。MU(マイクロン)に至っては売って、買って、また売るという奇行に走り、後から取引履歴を見たとき「一体どの猿が私のスマホをハッキングしたんだ?」と本気で疑った。恐ろしいことに、犯人は間違いなく私自身である。何をしたかったのか、今でも論理的な説明ができない。

投資歴も長くなり、多少の暴落など市場のノイズと達観できるようになったと自惚れていた。まったくの勘違いだった。

手が震えながらタップする様は、まるでスマホの画面に怯える小型犬だった。暴落はバーゲンセールなどと平時に豪語していた冷静な長期投資家の成れの果てがこれだ。人間の合理性など、SOX-10%の直撃を受ければいとも簡単に吹き飛ぶらしい。

SOX指数が10.26%急落した夜、恐怖でパニックになりNVIDIA株を狼狽売りする投資家の心情を描いた風刺的なアイキャッチ画像。泣きながらスマホで売却操作をする犬のイラストと、今回の市場暴落を示すグラフやテキストが描かれている。

6月5日に何が起きたのか|SOX指数-10%の背景

この大惨事の引き金は、5月の米雇用統計だ。非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、「おっ、まだまだ労働市場は強いじゃないか」という事実が確認された。これを受けてFRBの追加利上げ観測がご丁寧に再燃し、高バリュエーションで浮かれていたハイテク株から一斉に資金が逃げ出したというわけだ。

結果として、フィラデルフィア半導体指数(SOX)は1日で-10.26%。NVIDIAは-6%で時価総額約48兆円が消失し、半導体セクター全体で約208兆円が吹き飛んだ。ナスダックも-4.18%と、単なる健全な調整という言葉で片付けるには少々血生臭すぎる下落だった。

指数・銘柄 下落率(6月5日) 備考
フィラデルフィア半導体指数(SOX) −10.26% 1日の下落として歴史的水準
ナスダック総合指数 −4.18% 下げ幅1,000pt超
S&P500 −2.64%  
ダウ平均 −1.35% 695pt安
NVDA(エヌビディア) 約−6% 時価総額約48兆円消失
フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)とは?
Nasdaqが算出する半導体関連企業の株価指数だ。NVDA・AVGO・MU・TSMC・AMDなど約30銘柄で構成される。半導体業界全体の体温計として広く参照される指標であり、昨今のAI相場の恩恵を最も強烈に浴びてきた指数でもある。今回の-10.26%は、単一日の下落としては歴史の教科書に載ってもおかしくない水準だ。

私がNVDAを半分売った理由——正確には「理由などなかった」

事切れた後で、冷や汗を拭いながら考えた。なぜ私は売ってしまったのか。

NVIDIAの事業モデルが突然崩壊したわけではない。決算で大コケしたわけでもない。引き金は雇用統計という、半導体の技術革新とはおよそ直接関係のないマクロ経済の風向きだ。つまり、私がNVIDIAを手放す合理的な理由は、銀河系のどこを探しても一つも存在しなかった。

それでも私は売った。画面の赤い数字をぼんやり眺めているうちに、何かに取り憑かれたように指が動いていたのだ。

ここが個別株の恐ろしいところである。ETFであれば「まあ、市場全体が風邪を引いているだけだ」と割り切りやすい。しかし個別株となると、「もしかして、私の知らない悪材料が潜んでいるのではないか?」という疑心暗鬼が生じる。血眼になって調べ始める。調べれば調べるほど、SNSのノイズに当てられて不安が増幅する。そして、タップする。

合理的な理由もないのに株を手放す行為を、世間では損切りとは呼ばない。狼狽売りだ。認めたくはないが、私は見事なまでに狼狽していたのだ。

MUの取引履歴を見て、自分の正気が信じられなくなった

NVDAの売却以上に深刻だったのは、MUの取引だ。

売って、買って、また売った。後から取引履歴を時系列に並べると、一人の人間が完全に理性を失っていく過程を観察できる。値動きのノイズに過剰反応し、感情が暴走した結果、手だけが機械的に動いていた。冷静になった瞬間に「私は一体何の儀式を行っていたんだ?」と背筋が凍った。

企業の成長を信じて長期保有すると固く誓っていた銘柄を、たった1日の値動きに右往左往して売買する。それはもはや投資ではなく、ただのチンパンジーのダーツ投げだ。

暴落時に個人投資家がやりがちなこと
  • 合理的な理由なく投げる(パニック売り)
  • 売った直後に反発し始めて、慌てて買い戻す(往復ビンタ)
  • 複数銘柄を同時にこねくり回し、最終的に自分が何をしたかったのか迷子になる
  • 取引終了後、「なぜあんな行動に出たのか」を誰にも(自分にすら)論理的に説明できない

見事なまでに全部やった。教科書通りの愚行をコンプリートである。

それでも残りを持ち続けている理由

NVDAを半分投げ捨てた。MUも結果的にポジションを減らした。それでも、手元にまだ残りを握りしめているのは、半導体の長期的な需要シナリオが消滅したとは微塵も思っていないからだ。

AI、データセンター、自動運転。これら次世代のインフラが半導体なしに駆動しないという物理的な事実は、たった1日の市場のヒステリーで変わるものではない。雇用統計が良くてFRBの利上げ観測が再燃しようが、NVIDIAのGPUに対する世界の渇望が明日から急に冷めるわけがない。

今回の下落の正体は、企業の業績悪化ではなく、マクロの金利観の変化によるバリュエーションの修正だ。赤い数字は確かに恐ろしいが、全株を叩き売る理由にはならない。少なくとも、少し冷静になった私の理性はそう判断した。半分売ってしまったのは、単に私のボラティリティに対する精神の耐久値が限界を迎え、強制的にセーフティバルブが開いた結果に過ぎない。

この局面での私の判断(言い訳)
  • NVDA:約半分を涙目になりながら売却。残りは歯を食いしばって長期保有継続
  • MU:売り越し。ただし気まずい顔をしながら保有は継続
  • 売った理由:合理的なものは何一つない。己のボラティリティ耐性の欠如
  • 売らなかった理由:事業の毀損ではなくマクロのノイズだから

半導体個別株を持つということの「本当の意味」

今回の件で、一つの残酷な真実を学んだ。私は自分が思っている以上に、ボラティリティという名の暴力に対してひ弱だった。

設定来+389%という驚異的なパフォーマンスを叩き出しているグローバルX半導体ETF(2243)のチャートは、遠目に見れば美しい右肩上がりだ。しかし、その美しい線を虫眼鏡で拡大すれば、こうした血塗られた夜が無数に刻み込まれている。チャートは過去の投資家たちが震えた夜を無慈悲に消化し、ただの一本の線として綺麗に表示しているだけだ。

半導体の個別株をポートフォリオに組み込むということは、その血飛沫を最前線で毎回浴び続けるということに他ならない。ETFであれば、個別銘柄のノイズからは多少なりとも感情を切り離せる可能性がある。しかし、それすら絶対の保証はない。-10%という地獄のような夜に、お茶でも啜りながら平静でいられる狂った人間がこの世にどれだけいるのかは知らないが。

少なくとも私には無理だった。それだけは、痛いほどよくわかった・・・。

半導体ETFで同じセクターに乗るという賢明な選択肢

もし個別株の凶暴なボラティリティに耐えきれない(私のような)人間がいるならば、素直にSOX指数全体をETFで抱えるという選択肢がある。

円建てで東証から手軽に買いたいならグローバルX半導体ETF(2243)、米国ETFとしてドルで保有したいならSMHやSOXXあたりが王道だろう。もちろん、どれを選んだところで6月5日の-10%の直撃弾はそのまま喰らうことになる。だが、少なくともMUでやったような意味不明な反復横跳び(売買)は防げるはずだ。

もっとも、ETFを握っていたところで、-10%の夜に心安らかに眠れる保証はどこにもない。人間の感情や脳の構造は、そこまで合理的には設計されていないのだ。私がその、最高に情けない生きた証拠である。

まとめ|SOX-10%の夜に起きた悲喜こもごも
  • 2026年6月5日、フィラデルフィア半導体指数が1日で-10.26%という歴史的ナイアガラを記録。引き金は米雇用統計の強さによるFRB追加利上げ観測の再燃だ。
  • 私は恐怖のあまりNVDAをほぼ半分ぶん投げ、MUに至っては意味不明な往復売買を繰り返して手数料とスプレッドを市場に貢いだ。
  • そこに合理的な理由は一切存在しない。単に自分のボラティリティ耐性がポンコツだったことを証明しただけだ。
  • それでも残りを握り続けているのは、下落の理由が業績悪化ではなくマクロのノイズだから。半導体の未来は、私の精神力よりはるかに明るい。
  • 個別株を持つということは、暴落の夜の震えと孤独を、毎回自分一人で抱え込むということだ。投資は自己責任、とはよく言ったものである。