特定口座と新NISAの使い分けについて、世の中にはNISAを絶対優先しろという念仏のような記事があふれている。正しい。ぐうの音も出ないほど正しい。だが、その正論だけで綺麗に話が終わる人間と、そうでない人間がいる。
私は間違いなく後者だ。旧NISA時代から積み立ててはきたものの、人生の紆余曲折(という名の行き当たりばったり)で取り崩した過去もある。そして現在、私の入金力は堂々の「ほぼ0」だ。家計からの資金流入は完全に絶たれている。ではどうしているか?特定口座で育てた投資信託をチマチマと売り崩し、NISA枠へとせっせと移し替えている。右のポケットから左のポケットへとお金を移すような作業だが、まあそういうことを淡々とやっているのだ。
この記事では、特定口座とNISAの残酷なまでの違いから、なぜ両方が必要なのか、そして入金力ゼロの私が現在やっている錬金術を整理する。
- 特定口座と新NISAの違いとは?税率と損益通算から現実を理解する
- 新NISAを優先すべき理由とは?非課税の複利効果は時間が経つほど牙をむく
- それでも特定口座が必要な理由とは?NISAだけでは解決しない現実
- 入金力ゼロでNISA枠を埋める方法とは?特定口座を売り崩して移す実録
- 私の口座の役割分担:SBIはNISAと日本株、moomooは米国個別株
- 特定口座とNISAの使い分けまとめ

特定口座と新NISAの違いとは?税率と損益通算から現実を理解する
最大にして唯一の残酷な違いは、税金で持っていかれるかどうかだ。
| 新NISA | 特定口座(源泉徴収あり) | |
|---|---|---|
| 利益への課税 | 非課税 | 約20.315% |
| 配当への課税 | 非課税 | 約20.315% |
| 損益通算 | できない | できる |
| 年間投資上限 | 360万円 | なし |
| 非課税期間 | 無期限 | — |
| 売却後の枠 | 翌年復活 | — |
特定口座(源泉徴収あり)は、売却益や配当から国が親切極まりない顔をして利益の約20%を自動的かつ合法的に回収していくシステムだ。100万円の利益が出ても手取りは約80万円。NISAならその20万円がそのまま手元に残ってニヤニヤできる。長期になるほど複利でこの差がエグいことになるため、とりあえずNISAという教義が広まっている。これは証券マンのポジショントークではなく、冷酷な数学だ。
面倒な税金の計算と納付を証券会社が勝手にやってくれる、お節介かつ便利な口座。確定申告が原則不要なので、ものぐさな個人投資家のほとんどがこれを選んでいる。
新NISAを優先すべき理由とは?非課税の複利効果は時間が経つほど牙をむく
同じ元本・同じリターンで20年運用した場合、課税口座と非課税口座では手取りに天と地ほどの差が出る。
新NISAは非課税期間が無期限になり、売却した翌年に枠が復活するというチート級の仕組みになった。インデックス積立の置き場として、現状これ以上のオアシスはない。
ただし、NISAという魔法の箱だけで人生のすべてが解決するかというと、現実はそう甘くない。
それでも特定口座が必要な理由とは?NISAだけでは解決しない現実
年間360万円・生涯1,800万円という絶妙な上限
新NISAに入れられる金額は年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯で1,800万円が上限だ。
毎月30万円という大金を、缶コーヒーでも買うかのようにポンと投資に回せるブルジョア階級ならいざ知らず、普通の世帯がこのペースを息切れもせずに継続するのは、心理的にも物理的にも至難の業だ。
もっとも、毎月30万円のニューマネーを捻出できないからといって、私が指をくわえて聖域を眺めているわけではない。
特定口座からNISAへ直接移管できないとは?売却→課税→買い直しの現実
新NISAが始まったのは2024年だ。それ以前からコツコツ投資していた人間には、特定口座に含み益が乗った資産がある。これをNISAへ移すには「一度売却して税金を払ってから買い直す」という屈辱的なステップを踏むしかない。含み益が大きいほど移管コスト(税金)が重くなるという、なかなか皮肉でよくできた構造だ。
特定口座の資産をそのままNISA口座へポンと移す制度は現時点で存在しない。売却→課税→再購入という、少々痛みを伴う手順が必要になる。
損益通算はNISAではできない
特定口座には損益通算という救済措置がある。A銘柄で50万円の利益、B銘柄で30万円の損失が出た場合、課税対象は差し引き20万円で済む。NISAにこの優しさはない。NISA口座で損失が出てもなかったことにされ、他口座の利益と相殺できない。
個別株を触る人間にとって、損益通算はありがたい仕組みだ。
入金力ゼロでNISA枠を埋める方法とは?特定口座を売り崩して移す実録
先述の通り、私は現在、家計から自分の口座への入金をほぼ行っていない。入金力ゼロの状況でNISA枠を埋めるには、すでに持っている資産に働いてもらう(動かす)しかない。
具体的には、特定口座で運用している投資信託を売却し、そのお金でNISA口座の投資信託を買い直している。要するに、課税口座から非課税口座への地道なお引っ越し作業だ。
①特定口座の投資信託を売却(→約20%の税金をおとなしく払う)
②残った売却代金でNISA口座の同じ(または同等の)投資信託を購入
③以降の運用益・配当は非課税の恩恵にあずかる
当然、売却時に税金が持っていかれる。これは引越し業者への手数料だと割り切っている。長期で見れば非課税口座に移したほうが圧倒的に有利になるケースが多いからだ。
ただし、専業主婦である私は扶養への影響をシビアに管理する必要がある。確定申告において、譲渡益(売却益)や配当金については、金額が大きすぎると扶養から外れてしまうのである。私は譲渡益(売却益)については毎年諦めている。
夫の配偶者控除など家計に大きく影響するため、しくじると面倒なことになるのだ。確定申告の詳細については、別記事で詳しく書いている。
私の口座の役割分担:SBIはNISAと日本株、moomooは米国個別株
というわけで、現在の私の口座使い分けはこうなっている。
・SBI証券:NISA口座でインデックス積立。日本株個別株(オリックス・マクドナルド・NTTなど)の保有。基本的には気絶して放置。
・moomoo証券:特定口座で米国個別株(NVDA・MU・SNDKなど)。手数料0.132%と安く、チャートや情報ツールが圧倒的に使いやすいため米国株はほぼここに集約。
SBIで米国株を買うと手数料が0.495%かかるが、moomooは0.132%で済む。それだけで口座を分ける理由としては十分だ。しかし、チャートや情報ツールが圧倒的に見やすいという感覚的な理由も、正直かなり大きい。合理主義者を自称しておきながら、最終的にはUIの手触りで動いている事実は潔く認めよう。
特定口座とNISAの使い分けまとめ
- 新NISAは非課税・無期限・枠復活と役満が揃っており、インデックス積立の最優先口座として使う
- 年間360万円・生涯1,800万円の上限を超えた分、または枠を埋めきれない分は特定口座が受け皿になる
- 特定口座からNISAへの直接移管はできない。売却→課税→買い直しという作業が必要
- 損益通算(利益と損失の相殺)は特定口座でしかできない
- 入金力がなくてもNISA枠は埋められる。特定口座の資産を売り崩して買い直す方法がある
- 扶養内の場合、売却益の規模によっては配偶者控除に影響する可能性があるため要注意